やせっぽちソプラノのキッチン

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冬の東京(7)      2・3・2010

第七日目  1月28日(木)

夫の仕事が終わり、つくばから東京に移動しました。ホテルは最近お気に入りのグランドプリンス赤坂。ホテルからリムジンバスで成田空港まで直行できること、近くにレストランが沢山あること、そして値段の割には部屋がすべて36㎡ と広いことが決め手です。

ホテルには午前中に着いてしまい、チェックインできる2時まで荷物を預かってもらい、室町 砂場 赤坂店へお蕎麦を食べに出かけました。浅草にしても赤坂にしても、食べ物やさんの多いこと。昔から東京は三軒に一軒は食べ物やさんと言われていましたが、いまだにそれは変わっていません。

ビルの谷間の中にそこだけタイムスリップしたような古色蒼然としたたたずまいが、いかにも老舗を感じさせます。ここは2回目の訪問です。美味しいお蕎麦屋さんは必ず玉子焼きが美味しいのです。ですから、ここでも玉子焼き。玉子焼きというよりは出し巻きたまごですが、出し汁とたまごの味、ふわふわとした焼具合、とても美味しかったです。

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はしらわさびはアオヤギの貝柱。食べ始めてから写真を撮りましたので、少し崩れていますが、悪しからず。海苔とわさびをつけながら戴きましたが、これも美味しかったです。

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そしてざる蕎麦。ここはさらしな系ですので、真っ白いお蕎麦です。のどごしも食感も申し分ありません。かけ汁は少し甘めですが、さらしなには合うようです。もともとさらしなはそばの風味が弱いので、マイルドなかけ汁なのだとか。蕎麦の種類によってかけ汁も変えなくてはいけないのですね。かけ汁製作担当の私としては勉強になりました。蕎麦湯もさらっとしていました。

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本屋さんで時間をつぶして、チェックインをしますと、宿泊にはマッサージのクーポンがついていました。そんなこと、すっかり忘れていましたので、なんだか得した気分になり、嬉々としてマッサージ室に赴きました。

夫はヘッドマッサージ。私は上半身マッサージ。オイルをつけて、ていねいにもみほぐしてくださいます。「随分こっていますね。」と言われましたが、それもそのはずです。長時間のフライトの後の久しぶりの寒さと忙しさ。重い荷物を持って電車に乗ったり降りたり。たっぷり30分後、「お疲れ様でした。」と言う声で我に返りました。あまりの気持ちよさにもう少しで眠ってしまうところでした。

すっかりリフレッシュして夕飯に向かった先は菊乃井。実は赤坂に泊まったもうひとつの理由が菊乃井です。2年前の4月、初めて伺って感激し、もう一度違う季節に訪問したかったのです。1月末の冬の献立はどんなでしょう、と期待にわくわくしながら両脇が竹で覆われる低い石段を上りますと、玄関の引き戸が内側から開けられて、「お待ちしておりました。」と仲居さんが出迎えて下さいました。

カウンターの中央に案内されました。私たちはカウンターで戴くのが大好きです。盛り付けを見ることが出来ますし、ご主人と親しく話も出来ます。

お絞りを頂戴しますと、カウンター内の若い方が「ご一献を差し上げますので、お手元の杯をおとり下さい。」と言って赤い塗りの杯にお酒を注ぎました。なにやら三々九度のような趣ですが、お酒は桜の花に浸したと聞こえたように思いますが、確かではありません。

この日はご主人、村田氏はいらっしゃいませんでしたが、ここの板長さんと思われる方に、写真をとっても良いかお聞きしました。フラッシュをたかなければ良いですと答えられたので、安心してカメラを出しました。

先付はキンコと海鼠腸(コノワタ)。キンコはなまこの干したもので、これを三日かけて煮ながら戻すのだそうです。キンコも見せていただきましたが、いかにも硬そうな私の薬指ほどの大きさです。それをもどすと三倍の大きさになるそうです。

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干したなまこは中華でしか食べたことがありませんでしたが、非常に柔らかく、とてもおいしいものでした。

八寸。絵馬の形の杉板の上に、節分らしくヒイラギを飾り、いわしとえびの手綱鮨、菜の花、白魚、卯の花、黒豆。節分にはいわしの頭をヒイラギに刺す習慣が昔はあったそうですし、絵馬は2月初旬の初午に奉納したといわれています。黒豆はお正月の名残。1月の末なので季節の変わり目として、お正月のものと2月のものを組み合わせたのでしょう。キンコも鬼の金棒に似ているところからその名がついたようで、先付も八寸も季節の先取りです。

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偶然2-3日前に「京味」の西健一郎氏と作家平岩弓枝女史の共著「京味」の十二ヶ月を買って読んでいましたので、キンコも絵馬もヒイラギもなるほどと思って見ることが出来ました。

さて、肝心のお味ですが、一つ一つがていねいに作られていることが分かる味でした。お猪口の中に入っている菜種の辛し和えの辛さが少し強すぎたように思いますが。

向付のふぐ刺し。飾りは京にんじんとウド。もうウドが出ているのですか、と尋ねますと、今は年中出回っているのだそうです。
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メネギを芯にしてふぐでくるっと巻いてポン酢でいただきました。やはり、浅草で戴いたのとは格の違う美味しさでした。
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2種目はふぐの白子と皮の和え物。
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ふぐの白子はゆずとトリュフに、トリュフのオイルがかかっていました。ただでさえ濃厚なふぐの白子のお刺身にトリュフとそのオイル。正直、私はもっとさっぱりとポン酢で戴きたかったです。トリュフのオイルは私も時々オムレツにたらしますが、かけすぎると、トリュフの香りが強すぎて、元の料理の香りが消えてしまうのです。皮の方はさっぱりとして、コリコリした食感が美味しかったです。

煮物椀
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蓋を取ったときの驚き。なんときれいなのでしょう。薄く切った聖護院蕪は氷を表しているのだそうです。氷の下に透けて見える春。蕪の下には絵馬の形に切ったくわい。真ん中には今年の干支「寅」の焼印が。梅の形の京にんじんとゆずがすぐそこまで来た春を告げています。

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お出汁の味加減も素晴らしく、目で賞味し、舌でさらに味わうまさに至福のひと時でした。

焼物は松葉蟹。目の前で七輪で焼いてくださいました。
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かにのうまみが身に詰まっていて、本当においしかったです。
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味噌が沢山ついている甲羅に酒を少量、かにをさばいたときに出る身も混ぜて、焼いてくれました。このミソもおいしかったです。

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最後に甲羅に酒を注ぎ、甲羅酒として出してくださいました。これも蟹ミソの香りがお酒について、とてもおいしいものでした。多分焼き物と一緒に出たと思うのですが、ゆずの白いところをまるで砂糖漬けのようにしてお猪口のような器に出てきました。これがとても美味しかったのです。皮と実を使った後に残る白い部分をこんなにおいしいものに仕上げるその工夫もすごいと思いました。

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ふぐひれの汁物
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蒸し物、ゆず豆腐(?)
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ゆずだと思うのですが、とても大きく立派です。葉っぱも青々として中はお豆腐でしょうか。ゆず釜のまま蒸したと思われます。記憶があいまいでごめんなさい。真ん中の唐辛子の香りがよく、パンチが効いていました。とても美味しかったという記憶はあるのですが...紙に書いた献立を戴けたらきちんと記憶に残るのでは、とそれが少し残念です。

強肴。一人一人の前に置かれた火鉢では、すっぽん鍋。
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すっぽんの出し汁に京の聖護院大根、ごぼう、にんじん、せり、ゆず。もちろんすっぽんの身も入っていました。大振りに切った野菜もお汁もおいしかったです。でも、この頃になるとかなりおなかが一杯になり、食べきるのが大変になってきました。

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御飯と止椀
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蓋を取るとアナゴの入った五目蒸し寿司と粕汁。五目蒸し寿司もかなりボリューム感がありますが、その上に粕汁というのは正直言ってかなりきつかったです。
少し戴きましたが無理するのをやめて、残りの蒸し寿司はお持ち帰りにしていただきました。冷蔵庫に入れた後、次の日に飛行機の中で戴きましたが、とてもおいしかったです。
前に伺ったときはたけのこご飯で、それはお客さんのグループごとにお釜で炊き上げたもので、量がたっぷりあり、残りはお弁当箱に詰めてくださいました。

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水物。抹茶といちごのアイスクリームからのチョイスで、私はいちごを頼みました。たっぷりのいちごのスープの中のいちごアイスクリーム。デザートは別腹ですし、爽やかな果物の味と香りで、かえってお腹がすっきりしました。

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すべてのお料理を堪能して思ったことは、京懐石は芸術だ、と言うことです。目で楽しみ、香りを利き、食感を愉しみ、舌で味わう五感すべてで感じるものです。村田氏が言うように旬の食材を使い、季節を愛でる。日本料理の中には日本の美術や文学そして伝統が織り込まれているのですね。ですから、一つ一つの器にもこだわりを感じます。恐らくお料理にあわせて作っていただいたものでしょう。

接客にしても始めから終いまで、至れり尽くせりです。最後に仲居さんが「お見送りです。」と言いますと、板長さんが挨拶にこられ、門のところで、私たちが見えなくなるまで見送って下さいました。村田氏もやはりそうでした。

京懐石は料理だけでなく、器や雰囲気、お店の方々のていねいな気配り、サーヴィスも含めたすべてのものを楽しみにいく所なのだと思います。ですから毎日行くところではありません。私たちのようにたまに行くからこそ、新鮮な驚きがあり、幸せな気分になれるのではないでしょうか。   (終わり)
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by Mchappykun | 2010-02-04 05:11 | 旅行