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セレブレーション・オブ・ライフ             5・24・2010

今年3月17日71歳で天国に召された音楽家、イラーナ(Ilana)のセレブレーション・オブ・ライフが5月22日に執り行われました。Celebration of Lifeは亡くなったことを嘆き悲しむのではなく、その人が生きたことをことほぎ、感謝するセレモニーです。

イラーナと私の出会いは7年前にさかのぼります。彼女は私の師であり、メンターであり友達でした。私はコンサートの前はほとんどいつも彼女に聞いてもらい、意見を仰ぎ、そのおかげで自信を持ってコンサートに臨むことが出来ました。イラーナはピアニストであり、室内楽奏者、伴奏者であり、教師であり、優れた芸術家でした。音楽には決して妥協せぬ厳しさを持ちながら、人間的には温かで広い心の持ち主でした。彼女と話をしていると、母鳥の大きな羽で包み込まれているような安心感とぬくもりを感じました。

ユダヤ人の音楽家の両親を持ち、ナチスの迫害を逃れて乳児の時にアメリカにやってきたイラーナは、外国に住む移民の心情をよく理解していました。また、20年もマルファン症候群と言う不治の難病と戦いながら、演奏と教えることを最後までやりぬき通した不屈の精神の持ち主でもありました。彼女の音楽への愛と献身、そして音楽を愛する人への奉仕の精神は彼女のバックグランドから出てきたものなのかもしれません。セレブレーション・オブ・ライフはそういう彼女の人生への賛歌として、誠にふさわしいものでした。

数学者でありアマチュアのヴィオリストのご主人はイラーナの全ての演奏を録音したそうで、1970年のメンデルスゾーンの「ロンド・カプリチオーゾ」を始め、ピアノトリオ、そして最後のコンチェルトの演奏となった2007年のベートーベンの第1番第3楽章のビデオ。プログラムを締めくくった1976年のノーマン・デッロ・ジョイオ作曲のテノールの歌の伴奏「さようなら」と全てイラーナの音楽性、芸術性を余すことなく伝えた素晴らしい演奏でした。

セレブレーション・オブ・ライフが行われた教会。イラーナはここで何度もコンサートを開きました。2007年のベートンベンのコンチェルトもこのステージで、このピアノでした。

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2007年の10月にイラーナのピアノと彼女の30年来のトリオの仲間だったヴァイオリニスト、また友達のクラリネティストと私が一緒に行ったコンサートは私にとっての宝となりました。私以外は皆忙しい方たちでしたので、全員であわせたのはたったの2回でしたが、リハーサルを含め、本当に楽しい時間でした。

ドイツリートの解釈と伴奏でもサンディエゴでは第一人者であったイラーナと、一度ドイツリートばかりのコンサートを持ちたいという私の願いも、今では叶わなくなってしまいました。

名前のイラーナ(Ilana)はヘブライ語の木という意味のIlanotから派生した言葉だそうです。イラーナはその名の通り、伝統と才能と訓練を両親から根っことして受け継ぎ、しっかり根を張って成長し、演奏家としてまた教師として色々な音楽の分野に枝を伸ばし、その全ての枝が立派になり、大木になりました。(セレブレーション・オブ・ライフのプログラムより)人間として音楽家として素晴らしいイラーナに出会えた幸運に感謝しています。

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by Mchappykun | 2010-05-25 01:29 | 音楽